一周忌のお返しの選び方やマナーとは|おすすめ・タブーの品物も解説
一周忌の法要を控え、「お返しはいつ渡せばいいのか」「どのくらいの金額が相場なのか」「どのような品物を選べば失礼がないのか」と悩む方は多いでしょう。普段なじみの少ない儀式だからこそ、誤った対応をしてしまわないか不安に感じるのは当然です。
当記事では、一周忌のお返しの意味や香典返しとの違い、予算金額の目安、渡すタイミング・渡し方、一周忌のお返しにふさわしい品などの基本マナーを解説します。お返しとして避けるべき品物も具体的に説明しますので、読み終える頃には安心して準備を進められるでしょう。
1. 一周忌のお返しとは
一周忌は、故人が亡くなってから一年目の節目として営まれる法事です。この場では、参列者からのお供えや参列そのものへの感謝の気持ちを示すために「お返し」を用意します。一周忌では「御斎(おとき)」と呼ばれる会食とともに品物を渡すのが一般的です。
御斎を行わない場合は、折り詰めやお酒に加えてお返しの品物を用意する形が取られます。
なお、「引き出物」という言葉は本来、結婚式など慶事に使われる表現であり、弔事である一周忌では「返礼品」と呼ぶのが適切とされています。
1-1. 一周忌のお返しと香典返しの違い
香典返しと一周忌のお返しは、いずれも参列者からの心遣いに対する感謝を示す返礼品ですが、目的や内容が異なるため必ず別々に用意する必要があります。香典返しは、葬儀や通夜でいただいた香典(現金)へのお返しであり、食べ物や消耗品といった「消え物」を半返し程度の相場で贈るのが一般的です。
一方、一周忌のお返しは法要当日にいただく御仏前やお供物へのお礼で、会食代と引き出物を含めた総額が供物の5~7割程度になるのが目安です。そのため、香典返しよりもやや高額になる傾向にあります。返礼の対象や金額、選ぶ品物の性質が異なる点を理解した上で準備を進めましょう。
2. 一周忌のお返しをするタイミング
一周忌のお返しは、基本的に法要当日に行うのが丁寧な対応とされています。会食を終え、参列者が帰る前のタイミングでお礼の言葉を添えてお返しを手渡すのが一般的です。会食を行わない場合は、折り詰めやお酒などと一緒に持ち帰ってもらう形でも構いません。
ただし、参列できなかった方から御仏前をいただいた場合や、想定以上に高額なお供えをいただいた場合、法要後1週間から10日以内、遅くとも1か月以内に品物を贈るのがマナーです。近年では参列者への負担を考慮し、最初から後日郵送にする家庭も増えています。郵送の場合も同様に1~2週間以内を目安に対応することが望まれ、お礼状・挨拶状を忘れずに添えましょう。
3. 一周忌のお返しの金額相場
一周忌のお返しの金額相場は、参列者の持参する御仏前が一般的に1万~2万円程度であることを踏まえ、その5~7割程度を目安に考えるとよいでしょう。単純計算では5,000~14,000円となりますが、実際には地域の慣習や引き出物の一般的な品揃えから、3,000~5,000円程度に収まることが多く、これが平均的な相場とされています。
また、会食を行う場合はその費用もお返しに含めて考えます。たとえば、2万円の御仏前をいただいた際に7,000円の会食を用意した場合、残りのお返し品は3,000~5,000円程度を目安にし、会食代と合わせて御仏前の5~7割程度に調整するとバランスが取れます。
会食を行わない場合は、お返しのほかに折り詰めやお酒を用意し、総額で同様の割合になるように工夫しましょう。多額のお供えをいただいた際は、当日の品物とは別に後日追加のお返しを用意するのも心遣いとなります。
4. 一周忌のお返しの基本的なマナー
一周忌のお返しでは、のし紙(掛け紙)や渡し方にも細やかなマナーがあります。参列者への感謝を丁寧に伝えるためにも、基本的な作法を理解し、正式な形で準備を整えましょう。
4-1. 一周忌のお返しののしの種類
一周忌のお返しを準備する際は、のし紙の選び方や表書きにも正しいマナーがあります。まず、水引は黒白もしくは双銀の結び切りを用いるのが一般的で、関西などの一部地域では黄白を使うこともあります。のし紙は慶事用の「のしあわび」がついたものではなく、弔事用を選びましょう。包み方は会場で直接手渡しすることが多いため「外のし」が主流ですが、控えめにしたい場合や郵送で贈る場合は「内のし」でも問題ありません。四十九日までは涙で墨が薄くなることを表した「薄墨」を使いますが、一周忌以降の年忌法要では濃い墨で記します。
表書きは「志」が最も広く用いられ、宗教を問わず使うことが可能です。仏式の場合は「志」のほか「御仏前」や「御霊前」、「お供」とすることもあります。神式やキリスト教式では「偲び草」、西日本を中心に四十九日後は「満中陰志」とする地域もあります。これらはいずれも「感謝の気持ちを込めたささやかな贈り物」という意味合いを持っています。表書きの下には施主の名字もしくはフルネーム、または「〇〇家」と記載します。
4-2. 一周忌のお返しの渡し方
一周忌のお返しは、参列してくださった方一人ひとりに感謝の気持ちを込めてお渡しするものです。そのため、渡すタイミングや方法にも配慮が必要となります。基本的には参列者が帰る際に、施主が直接お礼の言葉を添えて手渡すのが丁寧な方法です。法要のみの場合は法要後、会食を行う場合は会食終了後にお渡しするのが一般的です。当日スムーズに対応できるよう、あらかじめお返しを紙袋に入れて準備しておくと列席者が持ち帰りやすくなります。
ただし、法要の当日は施主も挨拶や進行で多忙なため、参列者全員に手渡すのが難しいケースもあります。その場合は、料亭やホテルなどでの会食時に座席ごとにお返しを置いておき、食事が終わった段階で持ち帰ってもらうのも1つの方法です。参列者が多い場合や帰る時間がばらつく場合は、あらかじめ座席に置いておくことで、混雑を避けられるでしょう。会食会場のスタッフに協力を依頼し、参列者が席を立つタイミングで渡してもらう方法もあります。
いずれの方法を選ぶにしても大切なのは、参列された方への感謝の気持ちをきちんと伝えることです。お礼の言葉を添えて渡すことを意識し、当日の状況に合わせて柔軟に対応できるよう事前準備を整えておきましょう。
5. 一周忌のお返しの選び方
一周忌のお返しは、参列者へ感謝を伝える大切な贈り物です。選び方を誤ると失礼にあたる可能性もあるため、相手に喜ばれ、かつマナーに沿った品を用意しましょう。ここでは、一周忌のお返しの選び方の基本ポイントを解説します。
5-1. 消えものを選ぶ
一周忌のお返しには、食べたり使ったりして形に残らない「消えもの」を選ぶのが一般的です。これは「悲しみを繰り返さず残さない」という意味が込められており、弔事にふさわしい贈り物とされています。定番はお菓子で、羊羹や最中、せんべいといった和菓子のほか、クッキーやフィナンシェなどの日持ちする洋菓子も人気です。特に個包装になっているものは分けやすく、受け取る方にとっても食べやすいため喜ばれます。
また、お茶やコーヒーといった飲み物も、一周忌のお返しとしてよく選ばれる品です。緑茶は「故人を偲ぶ品」として長く用いられてきた歴史があります。コーヒーや紅茶は、洋菓子と組み合わせて贈ると一層好まれます。こうした「消えもの」は日常で役立つため、どの世代にも安心して贈れるでしょう。
5-2. かさばらないものを選ぶ
一周忌のお返しを選ぶ際は、参列者が持ち帰りやすいように「かさばらないもの」を意識しましょう。遠方から来られる方にとって、大きすぎたり重すぎたりする品物は負担となってしまいます。
そのため、軽量でコンパクトな食品や日用品などを選ぶのが無難です。また、華美な色合いや派手な包装は弔事にふさわしくないため、落ち着いたデザインの品を選ぶ配慮も求められます。
5-3. 実用性のあるものを選ぶ
一周忌のお返しには、日常生活で使える実用性のある品を選ぶと喜ばれます。たとえば、タオルや石鹸、洗剤は「清め」の意味を持ち、どの家庭でも役立つため人気です。また、タオルやハンカチに「悲しみを拭い去る」という意味合いを込める地域もあり、一周忌のお返しにおいて象徴的な贈り物と言えます。
とはいえ、自分にとっては実用性があると感じられても、相手が普段使わない品を贈ると困らせてしまうため、誰にでも便利なものを意識することが大切です。近年では、受け取った方が自分の好みに合わせて品物を選べるカタログギフトの人気も高まっています。カタログギフトは、遠方の親族や幅広い世代の参列者へのお返しに適しており、持ち帰りの負担もそれほどかかりません。
6. 一周忌のお返しにふさわしい品
一周忌のお返しには、参列者に感謝の気持ちがしっかり伝わる、落ち着いた品を選ぶ必要があります。ここでは、定番から近年人気の高いものまで、一周忌にふさわしいおすすめの返礼品を紹介します。
6-1. カタログギフト
カタログギフトは、受け取った方が自分の好みに合わせて品物を選べるため、年齢層やライフスタイルが異なる参列者が多い場面でも安心して贈れます。ギフトの内容も食品や日用品、タオル、食器など幅広く揃っており、近年では高級グルメや体験型ギフトなどを扱うものも登場しています。
参列者の好みが分からない場合や、品物選びに迷った場合、弔事用カタログギフトは適切な選択肢と言えるでしょう。贈る側にとっても、手間をかけずに喜ばれるお返しを用意できる点がメリットです。
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6-2. 和洋菓子
和洋菓子は一周忌のお返しの定番であり、「消えもの」として弔事にふさわしい品物です。和菓子では、長期保存が可能な羊羹や個包装で配りやすい最中が人気で、目上の方にも喜ばれる上品なお返しとなります。名店の詰め合わせギフトを選べば特別感も演出できるでしょう。
洋菓子ではクッキーやフィナンシェなどの焼き菓子が代表的で、個包装で分けやすく日持ちするため、幅広い世代に好まれます。中でも、缶入りクッキーは見た目にも華やかで、贈答品としての体裁も整います。
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6-3. タオル
タオルは、毎日の生活に欠かせない実用品として幅広い世代に喜ばれる品です。「消えもの」として弔事にも適しており、「清め」や「不幸を拭い去る」といった意味も込められています。特に今治タオルをはじめとする国産ブランドは、高品質で肌触りが良く、長く愛用してもらえる贈答品として人気です。
タオルだけでなく布巾やハンカチも同様に実用的で、デザインを工夫すれば故人の人柄を偲ぶきっかけにもなります。また、軽量で持ち帰りやすいため、遠方からの参列者にも負担をかけません。
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6-4. 石鹸・洗剤
石鹸や洗剤は「不幸や悲しみを洗い流す」という意味が込められ、一周忌のお返しの定番品です。日常的に使う消耗品であるため、受け取る側にとっても負担がなく、実用性が高い点が大きな魅力です。
香りのよい固形石鹸や肌に優しい無添加石鹸、環境に配慮した洗剤などは幅広い世代に喜ばれやすく、近年人気が高まっています。香りの種類に迷った場合は、幅広い年代に好まれるようなシンプルで上品な香りのものを選ぶとよいでしょう。
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6-5. お茶
お茶は「故人を偲ぶ」という意味を持ち、一周忌のお返しとして古くから選ばれてきた品です。緑茶のほか、煎茶や玉露、ほうじ茶、玄米茶など、多彩な種類から選べる点も魅力です。複数の種類を詰め合わせれば、幅広い世代に喜ばれる贈り物になります。
近年では若い世代を中心に急須を持たない家庭も多いため、手軽に楽しめるティーバッグや粉末タイプのお茶を選ぶのもおすすめです。相手の暮らしに合わせて飲みやすい形に配慮すれば、より心のこもった弔事ギフトとなるでしょう。
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6-6. 乾麺・お米
乾麺は賞味期限が長く、そばやうどん、そうめんなどの種類が豊富で簡単に調理できるため、日常的に食べやすいのが特徴です。贈られた方が好きなタイミングで調理し、家族と一緒に味わえる点も喜ばれるでしょう。
また、日本人の主食であるお米は好みが分かれにくく、どの世代にも喜ばれる安心感があります。保存期間が長く常温で保管できるため、夏場の法要でも扱いやすい部類に入ります。いずれも「消えもの」でありながら実用性が高く、誰にでも気持ちよく受け取ってもらえるお返しです。
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6-7. 調味料
調味料は、実用的で贈る相手を選ばない品の1つです。食用油や醤油、味噌、塩・胡椒などはどの家庭でも日常的に使うため、普段から料理をする方に贈る場合は特に喜ばれるでしょう。保存性が高く、長期にわたって活用できるのもポイントです。
高級感のあるオリーブオイルやごま油、こだわりの醤油や味噌などは特別感があり、贈答品としても向いています。ただし、瓶入りは重く持ち帰りに不便な場合があるため、小分けタイプや詰め合わせを選ぶと参列者への配慮になります。
缶詰・調味料ほか - 京王ネットショッピング
7. 一周忌のお返しでタブーの品
一周忌のお返しでは、弔事にふさわしくない品物を避けることが重要です。知らずに選んでしまうと、感謝の気持ちが正しく伝わらず、かえって失礼にあたる恐れもあります。ここでは、一周忌のお返しとして渡すのは避けるべき品について解説します。
7-1. 殺生を連想させる四つ足生臭もの
一周忌のお返しで避けるべき代表的な品が「四つ足生臭もの」と呼ばれる生肉や生魚です。これは殺生を連想させるため、仏教の教えや弔事の風習において不適切とされています。仏教では故人の死後四十九日までは精進料理を食す習慣があり、肉や魚を避けることが礼儀とされてきました。
その考えは一周忌にも受け継がれており、お返しとして動物性食品やその加工品を贈るのは控えるのが無難です。また、日本酒やビールといったアルコール類、生鮮食品も「弔事にふさわしくない」とされるため避けましょう。
7-2. 刃物など縁起が悪いもの
一周忌のお返しとして包丁やはさみなどの刃物類を選ぶのは避けるべきとされています。刃物は「縁を切る」「関係を断ち切る」といった意味を連想させるため、弔事においては不適切な贈り物と考えられています。
さらに、刃物は血をイメージさせることからも、悲しみの場面にふさわしくありません。誤解や不快感を招く刃物類は避け、誰にでも安心して受け取ってもらえる品を選ぶことが望ましいでしょう。
7-3. 縁起物をモチーフにしているお菓子
一周忌のお返しとしてお菓子は「消えもの」であり定番ですが、縁起物をモチーフにしたものは避けるべきです。だとえば、ツル・カメ・松は「長寿」、ひょうたんは「除災招福」、フクロウは「福が来る」、ウサギは「子孫繁栄」や「飛躍」を意味します。これらは結婚や就職などの慶事のお祝いにふさわしいものであり、弔事の返礼品としては不適切と考えられています。
また、バウムクーヘンは「幸せを積み重ねる」「繁栄」「長寿」を象徴する縁起菓子として広く用いられますが、弔事では「不向き」とする意見も多く、地域や親族の慣習によって解釈が分かれる場合があります。迷った場合は縁起物を避け、誰にでも安心して贈れるシンプルなお菓子を選ぶとよいでしょう。
7-4. 華やかすぎるパッケージの品物
一周忌のお返しは弔事にあたるため、品物そのものだけでなく包装やパッケージにも十分な配慮が必要です。たとえば、赤や金色などの華やかで派手なデザインはお祝いごとを連想させるため、一周忌のお返しとしては不適切とされています。
そのため、グレー・白・紫・ベージュなど、弔事返礼品には落ち着いた色合いの包装紙やパッケージを選ぶのが基本です。弔事の場にふさわしい落ち着いた印象の品物を選ぶことで、参列者に対して誠意を持ってお礼を伝えられるでしょう。
まとめ