お供えのお返しをするときの基本のマナーは?ふさわしい品物も紹介
葬儀や法要などの場面では、香典だけでなく、お花やお菓子などの「お供え物」をいただくことがあります。こうしたお供えに対して、お返しが必要かどうか悩む方も多いのではないでしょうか。
お供えのお返しは、香典返しと違い「必須ではない」とされていますが、状況によっては丁寧にお返しを用意するのが望ましいケースもあります。また、お返しが不要な場合でも、お供えを受け取ったときは感謝の気持ちをしっかり伝えるのがマナーです。
当記事では、お供えのお返しが必要なケースと不要なケースを解説し、基本的なマナーやお返しに適した品物、避けるべきギフトなどについて詳しく説明します。お供えのお返しを送る適切なタイミングや金額、のし紙の使い方、挨拶状の文例など、相手に対して失礼のない対応をするために押さえておきたいポイントも紹介しているので、マナーを守った対応をするためにぜひ参考にしてください。
1. お供えのお返しが必要な2つのケース
香典とは別に、お花やお菓子などの「お供え物」をいただく機会は、葬儀や法要の場面で多く見られます。一般的にお供えへのお返しは不要とされていますが、中には返礼品を贈ることが望ましいケースも存在します。
ここでは、お供えに対してお返しを用意したほうがよい2つの代表的な状況について解説します。
1-1. 1万円以上の高価なお供えをもらった
お供え物の相場は3,000円から10,000円程度とされており、線香や果物などが一般的です。しかし、1万円を超えるような高額なお供えをいただいた場合は、香典返しとは別に、あらためてお返しを用意するのが丁寧な対応です。また、香典と高額なお供え物を同じ方からいただいた場合は、それぞれに対して個別に返礼品を用意することが望ましいとされています。
ただし、地域の慣習や親族間の考え方によって対応が異なることもあるため、迷う場合は年長者や葬儀社に相談すると安心です。なお、線香など3,000円前後の少額なお供えに対しては、お返しを省略するのが一般的です。
1-2. 欠席者からお供えをもらった
葬儀や法要に出席できなかった方から、後日お供え物をいただくこともあります。このような場合、列席者とは異なり食事などのおもてなしができていないため、感謝の気持ちを込めてお返しを贈るのがマナーとされています。
直接伺って手渡しできれば理想的ですが、相手が遠方に住んでいる場合は、郵送での対応でも問題ありません。その際には、品物に加えて挨拶状を添えると、丁寧な印象を与えることができます。
2. お供えのお返しが不要なケース
お供えをいただいた際、すべてのお供え物に対して返礼が必要とは限りません。ここでは、お返しを用意しなくても問題ない2つのケースを紹介します。
2-1. 送り主からお返しを辞退された
お供え物を送った方が「お返し不要」と明記している場合には、返礼品は控えるのがマナーです。たとえば供花の札に「お返しはご無用です」などと書かれていたり、口頭や手紙などでその旨が伝えられたりしている場合が該当します。
お返しを辞退される背景には、遺族への負担を減らしたいという配慮があります。職場の同僚や友人たちが連名でお供えを用意した場合も、1人あたりの負担が小さいため、返礼の必要はないと判断されることが一般的です。
ただし、返礼品が不要であっても、感謝の気持ちを示すことは欠かせません。後日、丁寧なお礼状を送り、誠意を伝えましょう。
2-2. 香典以外のものをお供えされた
香典のように現金を受け取った場合は返礼の品を贈ることが一般的ですが、線香・ろうそく・お菓子・果物などの「物品」としてのお供えをいただいた場合は、基本的にお返しの必要はありません。これは、多くの地域や宗教的な慣習において広く認められている対応です。
なお、金額の大小にかかわらず、お供えに対して何の連絡も行わないのは礼を欠く行為とされています。お返しを行わない場合でも、感謝の気持ちを記したお礼状を送ることで、丁寧な印象を残せます。
3. お供えのお返しの基本マナー
お供えのお返しをする際は、感謝の気持ちを丁寧に伝えるとともに、礼儀を重んじた対応が求められます。タイミングや金額、のし紙の種類、挨拶状の書き方など、基本的なマナーを押さえておくことで、相手に対して失礼のない振る舞いができます。
ここでは、返礼時に気を付けたいポイントを項目ごとに解説します。
3-1. お供えのお返しを送るタイミング
お供えのお返しを送る時期は、お供えを受け取った場面に応じて異なります。葬儀や通夜の際にいただいた場合は、忌明け(四十九日)法要を終えた後、1週間以内を目安に送るのが一般的です。遅くとも1か月以内には手配を済ませると、礼を欠かさずに対応できます。
一方、初盆や命日、年忌法要の際にいただいた場合には、受け取ってから1週間から10日ほどで返礼品を贈りましょう。ただし、地域や宗派の慣習によっては異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。
お供えの感謝を丁寧に伝えるためにも、早すぎず遅すぎないタイミングで贈ることが重要です。
3-2. お供えのお返しの金額相場
お供えのお返しを選ぶ際は、品物の金額に対して3分の1から半額程度の価格帯を目安にするとよいとされています。たとえば、1万円のお供えを受け取った場合は、3,000円から5,000円ほどの品物をお返しするのが適切です。ただし、高額なお供えの場合は3分の1程度に抑えたほうが、相手に気を遣わせる心配がありません。
連名でお供えをいただいた場合は、1人あたりの負担額が少額であることが多いため、お返しは1つで構いません。その際は、皆で分けやすい個包装のお菓子や飲み物などを選ぶとよいでしょう。相手との関係性や地域の慣習を踏まえつつ、相応の金額と内容で感謝の気持ちを表すことが大切です。
3-3. お供えのお返しに使うのし
お供えのお返しには、慶事に使われる「のし」ではなく、弔事専用の「掛け紙」を用います。掛け紙の水引には主に黒白が用いられ、結び切りが基本です。関西では黄白の水引を使うこともありますが、全国的には黒白が一般的です。
表書きには「志」と記載しますが、地域や宗教によって異なる表記もあります。たとえば仏式の弔事返礼では「志(仏式)」が使用され、黒白五本の結び切りで、蓮の葉の柄が入ります。神道やキリスト教式の場合は「志(神式・キリスト教式)」が使われますが、こちらには蓮の柄は入りません。
また、葬儀の香典返しやお供えに対しては、四十九日までは「御霊前」や四十九日以降は「御仏前」と表記します。忌明け後のお返しに「満中陰志」と書くのが慣習で、これは西日本を中心に見られる表書きです。
その他、初盆や法要のお供えには「御供(仏式)」、キリスト教や神道の弔事返礼には「偲び草」が使用されます。また、「のしなし(弔事用包装のみ)」を選べば、掛け紙をつけずに弔事用の包装紙で仕上げる形式もあります。どの掛け紙を使うか迷う場合は、地域の風習と宗教形式を踏まえて選ぶと安心です。
3-4. お供えのお返しに添える挨拶状
お供えのお返しを郵送や宅配で贈る場合には、品物だけでなく挨拶状を添えることが大切です。直接言葉を交わせない分、丁寧な書状によって感謝の気持ちをしっかり伝える必要があります。挨拶状には形式的な文章を用い、句読点を使わず、縁起の悪い表現を避けるのが弔事のマナーです。
以下は一般的な文例に基づいた挨拶状の文言です。
【例文】
先般○○ 永眠の際は
御懇篤なる御弔詞並びに 御鄭重なる御供物を賜わり
御芳情誠に有難く厚く御礼申し上げます
この度 ○○、〇日忌の法要を営みました
就きましては供養の印までに 心ばかりの品御届け致しました
何卒御受納下さいますよう 御願い申し上げます
先ずは略儀ながら書中を以て 謹んで御挨拶申し上げます
敬具
この文例では、故人の永眠に際してのお供えへの感謝、無事に法要を終えたことの報告、そして返礼品の送付を伝えています。丁寧な挨拶状を添えると、形式にのっとった誠意ある対応を示すことができます。
4. お返しの品物の選び方
お供えのお返しは、感謝の気持ちを伝える大切な手段です。しかし、弔事ならではのマナーがあるため、品物選びには注意が必要です。一般的には「消えもの」と呼ばれる品物が適している一方で、避けるべき品物も存在します。
ここでは、お返しにふさわしい品物とふさわしくない品物について、それぞれ詳しく解説します。
4-1. お供えのお返しにふさわしい品物
お供えのお返しには「消えもの」と呼ばれる品物が適しています。消えものとは、使えばなくなる消耗品や食品を指し、「悲しみを残さない」という意味が込められています。代表的な品物としては、お茶・お菓子・海苔・洗剤・石鹸・タオルなどが挙げられます。
また、近年ではカタログギフトも人気を集めています。受け取った側が自分で好きな品物を選べるため、好みが分からない相手にも贈りやすい上、価格帯や内容も幅広く、予算に合わせて選ぶことが可能です。相手の年齢や家族構成、ライフスタイルを考慮した上で、心遣いの伝わる品物を選びましょう。
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4-2. お供えのお返しに避けるべき品物
お供えのお返しには、避けたほうがよい品物も存在します。誤った選択をすると、受け取った側に不快感を与えるおそれがあるため注意しましょう。
まず避けたいのは、肉や魚といった「四つ足もの」や「生臭もの」です。これらは殺生を連想させることから、仏事の返礼品としては不適切とされています。
また、鰹節や昆布などの縁起物は結婚祝いや出産祝いなどの慶事で用いられることが多く、弔事には不向きです。同様に、酒類も祝い事との結びつきが強く、特に仏教では「不飲酒戒」の戒律に反するため、お返しとしては適しません。
お菓子を選ぶ際も、鶴・亀・ふくろう・うさぎ・松竹梅など、長寿や繁栄を意味する縁起物の意匠があるものは避けるのが無難です。生クリームを使用したケーキなど日持ちしないものや、華やかすぎる包装のものも、お悔やみの気持ちが伝わりづらいためおすすめできません。
現金や商品券などの金券も基本的には避けるようにしましょう。贈る金額が明確に伝わってしまい、目上の方に対しては失礼に当たる可能性があるためです。ただし、親族間で事前に合意がある場合や、相手からの希望がある場合はお返しに選んでも問題ありません。
お返しの品は、感謝の気持ちとともに「弔意を伝える」ものであることを意識して選びましょう。
5. お供えのお返しに合った品物の例
お供えのお返しには「消えもの」と呼ばれる食品や日用品が適しており、悲しみを残さず日常に戻るという意味が込められています。中でも実用的かつ受け取った側に負担を与えにくい品物が選ばれる傾向にあります。
ここでは、お供えのお返しとして多くの人に選ばれている定番の品物を例に挙げ、それぞれの特徴や選び方のポイントを解説します。
5-1. お菓子
お菓子は、年齢や性別を問わず受け取った相手が喜びやすい、定番のお返し品です。日持ちのする焼き菓子や煎餅、ゼリーなどは、贈る相手の嗜好を問わず選びやすく、個包装されているものを選べば複数人で分ける場合にも便利です。
特に和菓子は、落ち着いた印象を与えるため、弔事の返礼品としても適しています。包装紙やパッケージは派手な色や装飾を避け、白やグレーなど落ち着いた色調のものを選ぶとよいでしょう。消耗品であるお菓子は「不幸を残さない」という意味合いも込められています。
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5-2. タオル
タオルは「悲しみの涙を拭う」という意味を持ち、弔事のお返しとして長年親しまれている品物です。日常的に使う実用品である上、消耗品としての性質も備えているため、贈る相手を選びません。
贈る際は、白やアイボリーなど落ち着いた色合いの無地を選ぶのが基本です。デザイン性の強い柄物や鮮やかなカラーは弔事にはふさわしくないため避けると無難です。
お供えのお返しとして選ぶ場合は、品質にもこだわり、高吸水性や柔らかさに優れたブランドタオルを選ぶと、実用性と上質さの両面で好印象を与えられます。
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5-3. 石鹸・洗剤
石鹸や洗剤は「悲しみを洗い流す」という意味を持ち、弔事のお返しにふさわしい品物とされています。毎日の生活に欠かせない消耗品であり、相手の家庭で必ず使われる実用的なギフトです。
香りに敏感な方にも配慮するために、無香料や香りの控えめなタイプを選ぶとよいでしょう。近年では、おしゃれなパッケージのボディソープや洗濯用ジェルボールなども人気です。清潔感と高級感を兼ね備えた石鹸・洗剤のセットは、幅広い世代に喜ばれるお返しの品です。
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5-4. お茶
お茶は、弔事において「あの世とこの世の境界を区切る」飲み物とされており、故人を偲ぶ時間を静かに過ごすための象徴的な存在です。香典返しとしては日本茶が主流で、特に静岡茶や宇治茶などの銘茶が好まれます。
贈る際は、落ち着いた色合いの缶や包装を選び、派手さを避けることが大切です。お茶は長期保存が可能で家庭でも使いやすく、年配の方にも親しみやすいため、幅広い層に喜ばれる品物です。
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5-5. 調味料
調味料は、家庭で日常的に使用されるため、実用性の高い返礼品として人気です。中でも醤油・味噌・出汁などの和食に使う調味料は、多くの家庭で重宝されます。特に小分けされた詰め合わせセットは見た目も整っており、品物としての印象も良好です。
調味料は「食べてなくなる」消えものに分類されるため、お返しに適していますが、味や塩分に好みがある場合もあるのでクセのない定番品を選ぶことが無難です。
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5-6. カタログギフト
カタログギフトは、お返しの品選びに迷ったときの強い味方です。受け取った方が自分の好みに合った品物を選べるため、ミスマッチを避けやすく、近年人気が高まっています。
弔事専用の落ち着いたデザインのカタログや、食品・日用品に特化したタイプなど、内容も多岐にわたります。価格帯も細かく設定されており、返礼の相場に合わせて選びやすい点も魅力です。相手への配慮を形にできる、現代的なお返しの選択肢と言えるでしょう。
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まとめ
お供え物へのお返しは、必ずしも必要なわけではありません。しかし、高額なお供えを受け取った場合や、葬儀・法要を欠席した方からいただいた場合など、返礼が望ましい場面では、相手に配慮した丁寧な対応が求められます。
一方で、送り主から「お返し不要」と明記された場合や、香典以外の物品だけを受け取った場合は、お返しを省略しても問題ありません。その場合でも、感謝の気持ちを伝えるために、お礼状を忘れずに送りましょう。
お返しの際には、送るタイミングや金額の相場、掛け紙や挨拶状のマナーにも注意が必要です。特に「消えもの」とされる食品や日用品は、弔事のお返しとして広く受け入れられており、無難かつ実用的な選択肢です。しかし、縁起物や生もの、金券などは避けるべきとされるため、選ぶ際は慎重に検討する必要があります。
弔意と感謝の気持ちを丁寧に伝えることが、相手への思いやりを形にする第一歩となります。マナーを踏まえた適切な対応で、礼を尽くしたお返しを心がけましょう。
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