葬儀のお返し「香典返し」のマナーとは?金額の目安や送る時期を解説
香典返しは、通夜や葬儀・告別式でいただいた香典に対するお礼として、遺族が後日お渡しする返礼品です。単に品物を返すだけでなく、「四十九日の法要を無事に終えたことのご報告」や「故人を偲んでくださったことへの感謝」の意味も込められています。香典返しには渡す時期や金額の目安、のし紙の書き方など、守るべきマナーが数多く存在します。
当記事では、香典返しを渡す時期や送る時期の違い、金額の目安、渡す際の品物選びやマナーについて解説します。
1. 香典返しとは
香典返しとは、葬儀や告別式でいただいた香典に対して、遺族が感謝の気持ちを込めてお渡しするお礼の品のことを指します。香典とは、本来仏前に供える金品であり、参列者が故人への供養と遺族への励ましの意味を込めて贈るものです。そのため香典返しには、「無事に四十九日の法要を終えたことのご報告」と「お世話になった方への感謝の意」を伝えるという、二つの役割があります。
地域や宗派によっては、香典返しのことを「満中陰志(まんちゅういんし)」と呼ぶ場合もあります。満中陰志は仏教における「中陰(ちゅういん)」の期間が満ちたことを意味し、故人の成仏を祈る気持ちを形にしたものです。香典返しは、宗教的意味合いとともに、社会的な礼儀として広く行われている風習です。
1-1. 香典返しと会葬御礼の違い
香典返しと会葬御礼はどちらも葬儀の場面で用意されるお礼の品ですが、目的と渡すタイミングが異なります。会葬御礼は、通夜や葬儀に参列してくださったすべての方に向けた「ご参列ありがとうございます」という感謝の気持ちを伝えるもので、当日に受付などで手渡しするのが一般的です。香典の有無に関係なく、全員に同じ品物をお渡しします。
一方、香典返しは、香典をいただいた方に対し、四十九日の忌明けを迎えたことの報告と感謝を込めて後日送る返礼品です。金額に応じたお返しが基本となっており、いただいた香典の半額程度の品を目安に選ぶのが一般的です。つまり、会葬御礼は参列に対するお礼、香典返しは金銭的ご厚志に対する返礼という違いがあります。
2. 香典返しを渡す・送る時期
香典返しは、忌明けを迎えたタイミングで贈るのが一般的です。宗教ごとに忌明けとされる日が異なるため、それぞれの考え方に沿って時期を決めましょう。
| 仏教 |
四十九日(七七日忌)の法要が終わった後が忌明けとなります。香典返しは、この法要の1週間以内を目安に贈るのが一般的です。関西地方では「満中陰志」とも呼ばれています。 |
| キリスト教 |
カトリックでは「追悼ミサ」、プロテスタントでは「昇天記念日」が行われる死後30日目頃を目安にお返しをします。忌明けという概念はありませんが、1か月以内に感謝の気持ちとして贈るのが習わしです。 |
| 神式 |
「五十日祭」が忌明けとされる節目になります。香典返しは、この儀式が終わった後、1週間以内を目安に贈ります。仏教と同様にお礼状を添えて送ると丁寧です。 |
また、万が一香典返しが遅れてしまった場合でも、誠意を込めたお礼状を添えて贈れば失礼にはあたりません。葬儀当日にお渡しする「即日返し」の形式もあり、地域によって異なるため事前に確認しておくと安心です。
3. 香典返しの金額の目安
香典返しでは、いただいた香典の半額程度を目安にお返しする「半返し」が一般的とされています。相手との関係や香典額によっては、1/3程度に調整することもあります。以下では、金額別に適した香典返しの相場を紹介します。
3-1. 高額な香典をいただいた場合
故人と特に親しかった方や親族などから、高額な香典をいただくことがあります。高額な香典をいただいた場合、必ずしも「半返し」にこだわる必要はありません。もともと香典は、急な出費を支える相互扶助の意味合いが強く、香典返しでは感謝と無事に法要を終えた報告が何より大切です。
一般的には、3分の1から4分の1程度の金額でお返しすることが多く、失礼にはあたりません。特に親族などは「葬儀費用の一助に」との思いで包んでいるケースもあるため、形式にとらわれすぎず、相手との関係性に応じて柔軟に対応することが大切です。
3-2. 香典が少なかった場合
知人や職場関係者などからいただく香典の額は、一般的に3,000円~5,000円程度が多く見られます。金額が少額だった場合でも、香典返しを贈るのが基本的なマナーとされています。
目安としては、香典の半額にあたる1,000円~2,000円前後の品物が適切です。お茶やタオル、菓子折りなどの日用品が定番で、形式よりも「感謝の気持ちをきちんと伝えること」が大切です。小額だからといってお返しを省略せず、丁寧に対応しましょう。
3-3. 香典を当日返しする場合
近年では、通夜や葬儀・告別式、初七日法要の場で香典返しをその場で渡す「当日返し(即日返し)」を選ぶケースが増えています。いただく香典の金額がその場では分からないため、当日返しでは金額にかかわらず一律の品物を用意するのが一般的です。
相場は2,000円~3,000円程度で、5,000円の香典に対する半返しに相当する価格帯が目安とされています。ただし、1万円以上の高額な香典を受け取った場合は、四十九日法要後に追加でお返しを贈り、合計で半返しとなるよう調整すると丁寧です。また、「当日返し」と「会葬御礼」は混同しやすいため注意しましょう。
4. 香典返しが不要になるケース
香典返しは原則として必要ですが、いくつかのケースでは省略しても失礼にあたらないとされています。たとえば、香典袋に「香典返しは不要」と明記されている場合や、公的機関・企業など香典返しを受け取れない団体からいただいた香典には、お返しを控えるのが一般的です。
また、故人が一家の大黒柱であった場合や、遺族に未成年の子どもがいるなど生活再建の配慮が必要なときも、相手の好意に甘えて香典返しを省略することがあります。その際は、お礼状や電話で感謝を伝えることが大切です。
地域によっては、香典返しの習慣がない場合や金額に関わらず一律の簡易な品で済ませる場合もあります。寄付を香典返しの代わりとするケースや、弔電・手紙のみ受け取った場合も返礼は不要です。
5. 香典返しを渡す・送るときのマナー
香典返しで失礼のないようにするためには、渡し方や添える言葉、のし紙などにも気を配る必要があります。以下では、香典返しを手渡し・配送する際の基本的なマナーについて解説します。
5-1. 香典返しの品物選びのマナー
香典返しは、感謝の気持ちとともに相手に失礼のないよう、品物選びにも注意が必要です。特に以下のような「タブー」とされる品物は避けましょう。
- 肉や魚(「四つ足生臭もの」)
- お酒や昆布・かつお節(慶事の象徴とされるため)
- 鶴亀・松・ふくろう・うさぎなど縁起物モチーフのお菓子
- 華やかすぎるパッケージやリボン付きの贈答品
- 商品券・金券(額面が明確なため)
一方、定番の香典返しには、個包装されたお菓子やお茶、タオル、カタログギフトなどがあります。日持ちがして常温保存できるものを選ぶと、どの年代の方にも喜ばれやすいでしょう。
5-2. 香典返しにおけるのしのマナー
香典返しには、贈答品としての形式を整えるため「のし紙」を掛けるのが一般的です。ただし、慶事とは異なる弔事用のマナーがあるため、のしの選び方や表書きには注意が必要です。
まず、使用するのし紙は「掛けのし」ではなく、水引が印刷された「掛け紙(のしなし)」を選びます。水引の種類は、結び目が簡単にほどける「結び切り(結びきり)」を使用し、色は関東では黒白、関西では黄白が一般的です。地域によって異なるため、迷った場合は葬儀社や贈答品店に相談しましょう。
表書きは、宗教・宗派によって以下のように使い分けます。
- 仏式:「志」が一般的
- 神式:「偲び草(しのびぐさ)」
- キリスト教式:「感謝」や「献花」
水引の下には、施主の姓またはフルネームを記載します。個人で手配する場合はフルネーム、家として贈る場合は姓のみでも差し支えありません。正しいのしの使い方を知っておくことで、感謝の気持ちをより丁寧に伝えられます。
まとめ
香典返しとは、葬儀や告別式でいただいた香典に対して、四十九日の法要後に感謝の気持ちを込めてお贈りする返礼品のことです。仏教・キリスト教・神式など宗教によっても贈る時期が異なり、マナーや地域差もあるため注意が必要です。
また、法人名義や生活状況によって香典返しを省略するケースもあります。のし紙や品物の選び方にも気を配り、弔事にふさわしい形式で相手に失礼のないよう心がけましょう。適切なタイミングと方法で香典返しを行うことで、故人への想いと感謝を丁寧に伝えられます。
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